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不登校とメンタルヘルス
こんにちは、GIVING TREE CLINICの山口です。
4月になり、新年度が始まりましたね。
新学年や新たな環境にステップアップした方は、いろいろ大変な時期だと思いますが、無理をしすぎない程度に頑張ってください。
今回のコラムでは、不登校とメンタルヘルスに関連したお話をしたいと思います。
不登校について考える前に、そもそも「学校」とはどのような場所なのでしょうか?
学校には、次のような役割があります。
⚫︎ 知識や考え方を学び、社会で生きていく力を育む
⚫︎自分の能力の特質を見極め、生き方を見つける手助けをする
⚫︎ 努力することの大切さを教える
⚫︎ 伝統や文化を尊重し、豊かな感性や体力・精神力を育む
⚫︎ 児童虐待防止の取り組みを行う
すなわち、「学校」とは、子どもたちが自立して社会で生き、豊かな人生を送れるよう基礎となる力を培う場所となります。
それでは、「不登校」とはどのような状況をいうのでしょうか?
文部科学省によると、「不登校生徒」とは、「学校に通う義務がある子どもが、年間30日以上学校を欠席すること」とされ、病気や経済的な理由による欠席は含まれません。
2024年の調査によると、2023年度の小中学校における不登校生徒数は34万人にのぼり、過去最多となっています。
不登校の要因は、いじめや学業のプレッシャー、友人関係の悩みなどさまざまですが、ただ単純に学校に行かない(行けない)という事実だけでなく、その背景には精神的な要因が関連していることも多いです。
たとえば、うつ病や不安障害、発達障害が不登校の背景に存在することもあり、時には頭痛や腹痛、吐き気、めまい、朝が起床できないといった身体化症状として現れることもあります。
このようなメンタルヘルスの問題は、生来健康な子どもにおいても成長過程で一時的にみられることもあますが、適切な支援を怠ると深刻な問題になってしまうこともあります。
不登校の兆候として、以下のようなサインが挙げられます。
⚫︎ 身体的な症状(頭痛、腹痛、吐き気、めまい、食欲不振、不眠、朝が起きられないなど)
⚫︎ 感情の不安定さ(怒りっぽい、涙もろいなど)
⚫︎ 家にこもりがちになり、外出を嫌がる
⚫︎学業に対する無力感(努力しても成果が出ないと感じる)
このようなサインは、単なる「怠け」や「甘え」とは異なり、メンタルヘルスの不調を示唆している可能性があります。
不登校に対する支援は、個別的かつ柔軟に行われる必要があります。
まずは学校とも相談し、短時間登校や別室登校、サポートルームの利用などスモールステップで具体的に検討していくことが大切です。
また、スクールカウンセラーを利用することもお勧めします。
近年では、学校外の支援機関として適応指導教室やフリースクール、放課後等デイサービスの整備・拡充も進んでいますので、そのような支援機関を利用し、子どもが自分のペースで無理なく学べる環境を模索することも可能です。
不登校が長引く場合には、一度心理検査を実施してもいいかもしれません。
心理検査を実施することで、子どもの特性(得意なこと、苦手なこと)が明らかになり、より特性にあった環境を整えることができます。
また、ご家族の理解と支援はとても大切です。
ご家族が子どもの状況を理解し、非難することなく寄り添うことで、子どものメンタルヘルスが改善されることが期待されます。
ご家庭での安心できる環境づくりは、子どものメンタルヘルスの維持・回復にとても重要です。
子どもは成長する力がありますので、ご家族も登校再開を焦りすぎることなく、子どものペースに合わせて支援していくことが望まれます。
不登校の原因となっているメンタルヘルスの問題に早く気づき、適切に支援することは、子どもの将来のメンタルヘルスの維持・向上にもつながります。
学校に行かない(行けない)ことが必ずしも問題ではありませんので、まずは子どものメンタルヘルスに目を向けてみましょう。
子どもの視点から考えてみると、「不登校」の対処法がみつかるかもしれません。
山口 大樹